バイオリンの保管環境について(温度、湿度)

バイオリンは、きっとオーケストラの中で最も繊細な楽器だ。

バイオリンをはじめとする弦楽器は、オーケストラで使われる楽器の中でも、最も繊細な楽器の一つです。
もちろん、どの楽器も乱暴に扱うべきではありませんが、中でもバイオリンはちょっとしたことでダメージを受けてしまうものです。

何百年もかけて、バイオリンの製作技術や修理技術が受け継がれてきていますから、よっぽどのことでなければ傷ついてしまったり、壊れてしまったバイオリンの修理は可能です。
(ただし、これはバイオリンの本体の話です。ポッキリと折れてしまった弓は、繋ぎ合わせることはできても、元の性能に戻すことは非常に難しいです。)

しかし、大きな修理を行った楽器というのは、そうでない楽器に比べて価値が下がってしまいます。
つまり、楽器の買い替えの時の査定などに大きく関わってくるわけです。

楽器を買い換える予定はなく、一生今の楽器を使いたいという方もいらっしゃると思いますが、そういう方こそ、楽器を大切に管理したいと思っていることでしょう。

もちろん、ご存知のようにバイオリンは薄い木材でできていますから、落としたり、ぶつけたりということには非常に弱いと言えます。
これは、誰でもすぐに想像できることだと思います。バイオリンを腕の高さから落としてしまったり、ましてや椅子の上に置いた楽器を踏んでしまったりなどは、まさに大事故でしょう。

今回は、比較的気の配りにくい、「保管する環境」ということに着目して、適切に保管するための注意点を考えたいと思います。

バイオリンにとって最も危険なのは、高い室温と低い湿度!

人間にとって最も快適な気温(室温)、湿度は、気温25度、湿度50%と言われています。
特に日本人は季節の変化を敏感に感じますので、夏と冬で多少許容範囲が異なってきますが、だいたいこれらの値が目安になります。

暑すぎても、寒くても、不快に感じます。特に、暑くて湿度も高いジメジメはとても堪えますし、低湿度の場合は空気はカサカサ、ウイルス感染、例えばインフルエンザに罹るリスクもあります。

もちろん、バイオリンがインフルエンザに罹ることはありませんが、人間が過ごしやすい環境条件は、バイオリンにとって安全な保管条件と一致します。
ここでは、室温と湿度について述べていますが、人間と同様、長時間の直射日光もNGです。(ニスが融けます)
多くの場合はケースに入れて保管するため問題にならないと思いますが、壁に吊るしておきたい方などは、注意が必要です。

さて、バイオリンにとっても、室温25度、湿度50%が理想ではありますが、もちろんある程度の上下は問題ありません。
しかし、高すぎる室温と、低すぎる湿度は大敵です。
目安としては、次のような環境になると、バイオリンは危険にさらされていると言えます。

  • 気温(室温) 40度以上
  • 湿度 40パーセント以下(特に30%以下)

慣れていない方は、40度、40%がボーダーだと覚えましょう。

まずは、温度に関して。
生活の中では、40度の気温、室温を超える環境はあまり思い浮かばないかもしれませんが、ここでは2つ、注意すべきシチュエーションを挙げます。

1つめは、真夏の炎天下に駐車した車の中です。
よく知られていることですが、日の当たる場所に駐車した車の中は、あっという間に高い室温になります。
40度、50度という気温になってくると、バイオリンのパーツ、すなわち表板や裏板、横板といった板をつなぎ合わせている「膠(にかわ)」という接着剤が融け始めます。
これは、接着剤に問題があるのではなく、このように温めることで分解できるようにし、修理をしやすく作っているためです。

長い間高温状態にバイオリンが置かれると、接着剤が溶けてしまい、ケースの中でバラバラになってしまいます。
車の色、車種によっては炎天下の車内の温度は60度をゆうに超えると聞きます。

夏場は特に、肌身離さずバイオリンを抱えておくべきだと思います。
温度に関しては、人間が我慢できる限りの環境であればバイオリンには問題ないからです。

2つめは、冬場の電車の中です。
これは、人間が我慢できる限りの環境であれば・・・という理屈は通用しないので注意が必要です。
以外に高温になるのが、電車の座席の足元にあるヒーターです。

男性の方に多く見られますが、電車に座った状態で角型の大きなケースを両足で挟み込むように座っていることがあります。
これは、足元のヒーターと楽器ケースが非常に近づき、危険です。

寒い日に足を温めるにはとても快適なこのヒーターですが、このようにケースを置いた場合は、足よりケースの方がずっとヒーターに近いはずです。
そして、何よりも人間の足であれば、熱いと感じた時に無意識に足の置き場を調節することができます。しかし、楽器ケースの場合はそうはならず、ずっと同じ場所に高温にさらされるのです。

乗車時間にもよりますが、20分、30分と乗っているとケースの中はかなり高温になります。
木のケース、ハイテク素材のケース等、素材によっても温まり方は違いますが、危険であることは確かです。

このような理由から、電車での移動がある方には、次のようなシェイプ型のケースをオススメしています。

東洋楽器 バイオリンケース プリュームファイバーヴィオII スーパーホワイト

話が少しそれてしまいましたが、温度については、人間が我慢できないほどの気温に注意するべきこと、また局所的に温めないようにすることが重要です。

文章が長くなってきてしまったので、湿度については次のページで述べたいと思います。

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