「コントラバス用」ダンピットのすすめ

低湿度によるバイオリンの「割れ」に注意!

バイオリンはオーケストラの楽器の中でも特に繊細な取り扱いが必要な楽器であり、そして高温に対する注意が必要なことを、前のページで紹介しました。

高い気温、室温の環境下にバイオリンを放置すると、バイオリンの板を接着している膠(ニカワ)が融けて、最悪の場合には楽器がバラバラになってしまう、という内容でした。
人間が生活できるような室温であれば問題になることはありませんが、炎天下の車の中に楽器を放置したり、電車の座席下のヒーターなどで局所的に温めてしまうことがないように注意するべきです。

さて、今回は、湿度に関して扱います。
前のページで書いたように、バイオリンを保管する上での湿度の条件は、「40パーセント以上」です。

40%を下回ったからといって、すぐにバイオリンに悪影響があるわけではありませんが、長くそのような状況にバイオリンを置いたままにすると、材料の木が収縮し、ヒビや割れの原因になってしまいます。

板が割れてしまっても修理することは可能ですが、やはり楽器としての価値は下がってしまいます。
ある程度湿度に気をつけながら楽器を管理するべきだと思います。特に、冬場は乾燥しがちなので注意が必要です。

湿度40%を切ったら黄色信号、さらに乾燥して30%を下回ったら赤信号だと考えるべきです。

加湿器のオススメは、スチームタイプの製品

乾燥対策はすなわち加湿、ということになるわけですが、特に冬場はどんどん部屋が乾燥してくるので、加湿器等による対策が必要になります。

加湿器といえば色々なタイプがありますが、衛生面を重視する方は、

このようなスチーム式のものがオススメです。私もこれを使っています。

凝ったデザインの超音波式の加湿器なども流行っていますが、カビや菌が繁殖した時に空気中にそれらがばら撒かれるというリスクがあります。
その点、スチーム式の加湿器は原理的に煮沸消毒した後の水蒸気を出しているので、より安全だと言えます。

少し話がそれてしまいましたが、もちろんバイオリンにとってはどのタイプの加湿器でも問題はありません。もちろん人間と同様、より清潔なのが一番ではありますが。

ここでは、加湿器を用意するのであればスチーム式が良いということを、お伝えしました。

湿度低下への対策は、有名なDampit! それも、バイオリン用ではなく…!?

加湿器によって乾燥対策はできるものの、一日中加湿器をつけておくのが難しい場合もあります。
ずっと部屋に居るならばご自身の健康管理にもなりますし、バイオリンやチェロをたくさん扱う弦楽器店の売り場であれば、加湿器をつけっぱなしにするのも費用のうちということになるでしょう。

しかし、外出の多い家庭では、電気代の観点からも加湿器を常時ONにしておくのが難しい場合もあるでしょう。

そんな時に手軽に楽器の湿度調整をできるのが、有名な「Dampit(ダンピット)」です。

緑色のチューブの形をしていて、バイオリン用はこのようになっています。
チューブの中のスポンジを濡らし、f字孔からチューブを入れ、少しずつ中の水分を楽器内で蒸発させるというものです。

なお、ヴィオラ用もありますが、経験上f字孔の丸い穴のサイズによってはバイオリン用を使用した方がいい場合もありますので、ご注意ください。

チューブは柔らかいゴムでできているので、演奏している間も含めてずっとバイオリンの中に入れておけるメリットがあります。
しかしその一方で、中のスポンジの部分だけとは言っても水で濡らしたものを楽器の中に入れるわけですので、慣れてない方が行なった場合は水滴が楽器の中に漏れてしまう可能性があります。

楽器の中は、バイオリンの外観の部分とは違ってニスが塗られていないので、水滴が楽器の中に入ってしまった場合は大きな問題です。

そこでお勧めしたいのが、コントラバス用のダンピットです。

Dampit ダンピット 楽器保湿材 コントラバス用

もちろん、このサイズではバイオリンのf字孔に入れることはできません。太さがバイオリン用とは明らかに違います。

このコントラバス用のダンピットを、バイオリンケースの中の、肩当を入れる部分や松ヤニを入れる部分に入れるのです。(むき出しの肩当ての留め具などではなく、閉じられる布製の小物入れの部分をお勧めします。)

この方法をとるメリットは、次の3つです。

  • 楽器の中で水滴が漏れる恐れがない
  • コントラバス用のダンピットは大きいため、給水の頻度が少なくて済む
  • 楽器の中に入っているわけではないので、水分の残りが確認しやすい

唯一デメリットを挙げるならば、演奏中はケースから出してしまうため保湿ができない、という点です。
しかし、これは経験上1時間〜数時間程度の練習であれば、よっぽど乾燥しきったところでない限りは問題にならないと考えています。

一日中乾燥している部屋で楽器を弾く(演奏者の身体にも悪そうですが…)ことがあれば、先に紹介した楽器の中に入れるタイプのバイオリン用Dampitをお勧めしますが、そうでない場合はコントラバス用の大きなDampitをケースに入れておくことを、お勧めします。

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