消音器の役割と、必要になる時
例えば自宅に広くて遮音性の高い防音室があれば、練習環境としては申し分ないでしょう。しかし、そのような恵まれた環境にある方は、ごくごくわずかです。
そもそも、これから楽器を始めようという方に、「まずは防音室から準備してください」というのも難しい話です。せっかく、近年ではバイオリンの生産技術の進歩によって手に入りやすくなっているのに、防音室を自宅に作ろうとしたら、入門者用のバイオリンより高い費用がかかってしまうというものです。
前のページで書いたように、現実的な練習方法としては、カラオケボックスで練習したり、消音器というバイオリンの音量を下げる部品をバイオリンに取り付けて練習するということになろうかと思います。
バイオリンの駒の部分に重りをつけて、バイオリンが大きく鳴るのを防ぐのが、消音器です。
消音器は、マンション等に住んでいる方の練習にはもちろん役に立ちます。それ以外に、一戸建てに住んでいる方の場合でも、家族が近くの部屋にいたり、遅い時間で近隣への迷惑が気になる場合にも使えます。
高価なものではないですし、弦のような消耗品ではないので、ぜひ手元に一つ持っておくと良いと思います。
消音器と弱音器の違い
ここまでの説明で、消音器はバイオリンの鳴りを抑えるものだとお分かり頂いたと思います。
消音器と似た名前のパーツに、「弱音器」というものもあります。はじめのうちは、この二つが混同されがちなので、気をつけましょう。
カタカナで表現する場合では、両方を指して「ミュート」と言ったり、消音器のみを「サイレンサー」と言ったり、これまたややこしいのです。
なお、通例として、弱音器のことを「サイレンサー」ということはありません。
消音器が練習時に使用されるものである一方で、弱音器は主にオーケストラなどで演奏するときに音色の変化をつけるために用いられます。
どちらも原理は同じです。バイオリンの駒に重さのあるものを取り付けて、振動を弱めることで効果を発揮します。
違いは、「どの程度弱めるか」ということです。代表的な消音器は、このように金属でできていたり、ゴム製のものでも、すっぽりとバイオリンの駒を覆う形をしています。。
できるかぎりバイオリンの音を抑えたいときに使うのが消音器なので、大きさ、重さ共にかなりのものとなります。
一方で、バイオリン用の弱音器はどのようなものかというと、ほぼ全てのオーケストラプレーヤーが、下の2つタイプの消音器のどちらかを使用しています。
通称「トルテミュート」と言われているものです。駒への取り付け方が若干違いますが、効果はほぼ同じです。
多くの場合、右側のタイプの方が安く販売されています。(クリックすると、Amazonでの販売価格を確認できます)
他にも硬いワイヤーでできたものなどもありますが、まずはこの右側の丸いタイプのものを一つ持っておけば、オーケストラでは困らないでしょう。
さて、いろいろ説明してきましたが、消音器は家での練習用に使うもの、弱音器はオーケストラなどでの演奏において、音色の変化をつけるもの、とお分かりいただけたでしょうか。
どちらも一つずつ持っていて良いとは思いますが、会話の中で間違えるとややこしいことになるので、注意しましょう。