開放弦を味方にして、表現の幅を広げよう

開放弦の使用は、悪なのでしょうか?

アマオケで弾いていると、「開放弦は使わないように」という注意が多くなされます。特に、E線の開放弦については、絶対に使わないように、という言い方をされるほどです。

確かに、オーケストラのような大人数のバイオリンセクションで全員が開放弦を使った場合には、その音だけ異質な音色となり不都合である、という点は事実です。
しかし、これらの注意の結果、「バイオリンの演奏に際しては開放弦の使用は悪」という意識が必要以上に染み付いてしまっていないでしょうか?

バイオリンの魅力は、その音色の多彩さ

バイオリンには、さまざまな音色のパレットがあります。
ここでいう音色のバリエーションとは、もちろん弓の使い方による表情の変化もありますが、それ以外にも開放弦の利用やハーモニクス(フラジオレット)の利用による音色の変化も含みます。
これらを積極的に音色の変化をつけることができるのです。

例えば、有名なモーツアルトのバイオリン協奏曲の3番に、次のようなフレーズがあります。

赤字で書き入れたように積極的に開放弦を使うことで、明るく活き活きした音色になります。
確かに、開放弦の音とそうでない音でスタッカートの音の伸び具合などが厳密には異なってしまい、これを速いパッセージの中の弓使いで調節するのは事実上不可能です。
しかし、この動きの中でスタッカートの音の長さが若干違っていても全体のイメージは損なわれませんし、キラキラした音色を優先する価値があると思います。

また、当然ながら、フィンガリングがシンプルかつ簡単になるという利点もあります。
フィンガリングが簡単になるということは、その分右手の動きやフレーズ全体の流れにより注意を向けられるということです。
これはとても大きな利点です。

開放弦を使わなくても弾けるように、とにかく練習するべき、という考え方もあるかもしれません。
しかし、必要以上にストイックになることは得策ではありません。

練習の一つの方法としてはありですが、本番に安心して弾けるようになるのだとすれば、是非とも開放弦の利用も検討するべきです。
後ろめたく感じる必要はないわけです。
この記事で紹介したように、音色のバリエーションが広がるメリットもあるわけです。

この辺りの考え方は、発表会などで演奏するソロなのか、オーケストラの中で演奏するのかなど、場合によって変わってきますね。
オーケストラだと、確かに全員が急に開放弦の音をだすことで、飛び出して聞こえてしまうこともあるため、半分ぐらいメンバーは開放弦を控えるなどの工夫をするのもあり、です。

開放弦の音色や効果をよく理解し、開放弦を味方につけたフィンガリングの検討と演奏をしましょう!

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