小さな見た目からは想像できない、パワフルな音
バイオリンは、様々な楽器の中でもかなり小さな楽器です。もちろん軽く片手で持つことができますし、演奏者も弾かないときは右腕で小脇に抱えるようにしています。
例えばオーケストラの楽器を見渡してみると、サイズの他に重さに関しても、フルートやオーボエといった一部の木管楽器を除いて最も軽い楽器です。
このようにバイオリンは非常に小型の楽器ですが、その本体から生まれる音はとても大きく、オーケストラをバックに協奏曲が演奏できるほどです。これは、音の大きさや芯のある音色によるだけではなく、バイオリンが中程度の音域から超高音域までを奏でる「通りやすい」音を持つ楽器ということも要因の一つです。
バイオリンの先祖に当たる楽器をたどっていくと、15世紀ごろの、胴体に皮を張った東洋の弦楽器に行き着きます。実に数百年ほど前になるわけです。胴体に皮を貼るということは、二胡や三線に近いと言えるでしょう。これが、バイオリン属として生まれ変わるにあたっては、表板も裏板も木で作られるようになったのです。
初期のバイオリンは、少人数のパーティーなどで演奏される程度で、音量はあまり必要とされていませんでした。そのため楽器の進化、改良においても音量は重視されていなかったのです。
ところが19世紀頃からは大きな会場でバイオリンが演奏されることも増え、たくさんの聴衆にその音を届けるために、音量も重視されるようになってきました。そのため、バイオリンのネックは長くされ、駒の高さも上げられ、というような張りのある高音まで演奏できるように改良されたのです。
これがバロックバイオリンからモダンバイオリンへの進化です。この進化により、バイオリンは大きな輝かしい音を手に入れたのです。
現代でもより大きな音量が求められているのは変わりませんが、楽器の抜本的な改良が試みられているわけではなく、合成素材の弦の開発などに力が注がれています。
バイオリンの音域
バイオリンの音域は広く、4オクターブほどにわたります。スケール(音階)で楽譜に書き起こすと、次のようになります。
五線譜から完全にはみ出てしまうほどの高音域になりますね。バイオリンの音は良く女性の声に例えられますが、この音域を考えると妥当なのかどうか疑問を感じてしまうほどです。
実際の楽譜では、五線譜から大きくはみ出した部分を瞬時に読み取ることは非常に難しいので、次のように部分的にオクターブ下げて記譜(譜面に書くこと)されることがほとんどです。
オクターブ下げて書かれたような音域をバイオリンで演奏するには高い演奏技術が求められますが、バイオリンソロが主役になるバイオリン協奏曲では、このような音域がふんだんに使われ、きらびやかな音が奏でられます。