バイオリンパートがファーストとセカンドに分かれている理由

弦楽器は組み合わせて使われる

ファーストバイオリンとセカンドバイオリンの違いは、オーケストラなどの合奏についてあまり詳しくない方、もしくはこれからバイオリンを始めようとされている方からよく質問されることです。

もっとも特徴的な違いは、それぞれが受け持つ音域の違いです。ですがここでは、そもそもなぜバイオリンだけがファーストバイオリンとセカンドバイオリンという、同じ楽器にもかかわらず2パートに分けられた編成になっているかということを考えてみましょう。

室内楽やオーケストラでは、複数の種類の弦楽器が組み合わされ、弦楽器セクションが構成されます。室内楽ではバイオリン、ビオラ、チェロがよく用いられますが、オーケストラにおいてはほとんどの曲でコントラバスが加わります。

それぞれの音域はある程度被っています。
例えば、高音域を担当するバイオリンが演奏できる中で低い音を出し場合と、チェロが演奏できる限りの高音を出した場合は音域が重なるわけです。そのため、作曲家はそれぞれの楽器を柔軟に組み合わせて自由に音を並べることができるのです。

もともと弦楽器はそれぞれ幅広い音域を得意としていますが、このように弦楽器を組み合わせることで、幅広い音域を使った重厚なハーモニーを作ることができるわけです。

バイオリンパートが2つに分かれている理由は、その音域にある

バイオリンが4オクターブわたる広い音域を演奏できることは、こちらの記事で紹介した通りです。そして、この広い音域こそがバイオリンを2パートに分けている理由です。

先に述べたように、弦楽器それぞれは音域が重複して繋がっていますが、バイオリンの持つ最高音域は、他の楽器では出すことができません。そのため、バイオリンの音域の中でも高音域を主に担当するファーストバイオリンと、通常の音域を受け持つセカンドバイオリンが分けられたのです。

結果としてセカンドバイオリンは、ヴィオラとほぼ同じ音域を演奏することが多いのですが、ハーモニーを作る「内声」は1パートでは成り立たないので、セカンドバイオリンとヴィオラが協力してハーモニーを作ることが多いです。

ならば、ヴィオラを2パートに分けても良さそうですが、セカンドバイオリンがここぞという時にファーストバイオリンと共に高音部を演奏することを考えると、バイオリンを2パートに分けたのが合理的だったのでしょう。現在ではヴィオラ奏者よりもバイオリン奏者の方が圧倒的に多いので、そういう意味でも理にかなっていると言えます。

こうして、弦楽器はファーストバイオリン、セカンドバイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという「弦5部」という形を作るようになったのです。

ただ、室内楽の曲においては作曲家の趣味により異なる編成が取られることもあります。例として、モーツアルト作曲の「ホルン五重奏」という曲が挙げられます。このようなタイトルが付いていますが、ホルン奏者5人により演奏されるわけではなく、ホルン×1に対して弦楽器が4、となります。

通常であればこの4つの弦楽器はファーストバイオリン、セカンドバイオリン、ヴィオラ、チェロとなるわけですが、モーツアルトはヴィオラを2つにする選択をしました。
結果として、5人による編成はホルン、バイオリン、ファーストヴィオラ、セカンドヴィオラ、チェロとなったのです。

モーツアルトの考え方は推し量るしかありませんが、ホルンの豊かな中音域とバランスを取るために、弦楽器側にも中音域を得意とするヴィオラを厚く用意したのでしょう。

最後はヴィオラの話になってしまいましたが、バイオリンが幅広い音域、とりわけ高音域〜超高音域まで演奏できることからファーストバイオリンとセカンドバイオリンの区別が生まれた、というわけですね。

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